「THE TIME,」
コンセプト設計
まずは番組プロデューサーやマーケティング担当、ブランディング担当の部署の方々とデザイナーで集まり、番組視聴に関する様々なデータから、「誰に届けたいか」「何を届けたいか」を議論していきました。
ニュースや災害報道を扱う番組では「いつでも・誰にでも」しっかり届けることが重要となり、一般的なサービスや商品と比較してユーザーの属性を絞ったり、想定する視聴シチュエーションを限定することが難しい場合が多いため、定性・定量の両面から丁寧にリサーチを積み重ねながら、番組をどんな「家庭」に届けていくかを、よりリアルに具体的な形で仮定していきました。
この早期段階の議論からデザイナーが参画することで、番組の企画作りとテロップデザインの細かな部分まで、一貫した思想で取り組むことができました。
テロップから伝わる印象
テロップは番組の情報を文字で伝えるためのものではありますが、特にニュース番組や情報番組の場合、画面に表示される時間も多く、番組の印象に大きく関わります。
この影響力の強さを鑑み、通常はセットデザインの動き出しが一番早いことが多いのですが、今回はテロップの中でも一番多く画面に表示される時報(時計)テロップのカラーやフォントのデザインを、何よりも先に決定しました。
時報テロップで定めたカラーや余白感、質感を何度も検証し、そこから番組全体のデザインのトンマナやデザインガイドラインを作成していきました。
伝わるテロップのデザイン
テロップのデザインで重要なのは、カラーやフォントなどの「印象」だけではなく、「見やすさ」の追求が肝になります。よりリアルに視聴者の立場から検証して、見やすい文字数、文字サイズ、そしてテロップ同士の位置関係なども同時に検討しました。
例えば、画面の上部には時報や天気、サイドスーパーなどが横並びで配置されるため、なるべくガタガタをなくして画面を気持ちよく見られるように整理したり、文字とベースの余白を整理したり、文字の色付けのルールを決めたり…などといった細かな調整を行なっております。
このように、番組の世界観を演出しながらも、しっかりと伝わる画面構成・テロップデザインができていきます。
ここにもブランドデザインが
THE TIME, のキーカラーは青、ピンと来た方もいるかもしれませんが、TBS全体のブランドキーカラーである「TBSブルー」なのです。TBSの1日の始まりであり看板番組に「TBSブルー」が使われているのはデザイナーとしても感慨深いです。
そして、テロップで使われているフォントはTBSフォント(TBSゴシック TP)です。
TBSの名刺や経営資料、webサイトでも使われているフォントが、番組内でも使用されております。
(TBSフォントは他のニュース番組でも多く使用しておりますので、興味がある方はTBSのニュース番組のフォントをよーく見てみてください!ちなみに、実はTBSのブランドはもう一種類あるのです。もっと知りたい方はこちらの記事も覗いてみてください)
そしてそして、THE TIME, は、世界のニュースやスポーツ、芸能、天気情報など様々なコーナーがあるのですが、現在何のコーナーなのか直感的にわかるように、それぞれ独自のアイコンで表現しました。そこで使われているのが「TBS ブランドピクトグラム」です。TBSのブランドデザイン(カラーやフォント)と相性が良いようにデザインしたピクトグラムなのですが、ついに番組デビューしました。
こうして、ブランドデザインに継続的に関わって蓄積・開発したデザインアセットやノウハウを番組デザインなどにも適切に反映し、さまざまな角度から「TBSデザイン」を成長させていくことができるのは、インハウスデザイナーとして非常にやりがいを感じる点です。
「news23」
番組の目指す「トーン」の構造化
リニューアルにあたり、ロゴや画面ビジュアル、ひいてはセットデザインにも影響する「トーン」を定めることが最初のステップでした。
「どんなターゲットに届けたいのか」「どんな印象を持ってほしいのか」「逆にどんなトーンは避けたいのか」といった部分を番組プロデューサーやディレクターとすり合わせるため、いきなりビジュアルを並べて選んでもらうのでなく、過去の23や競合のリサーチ、狙うターゲット層の好むトーンの考証、キーワードとしてはどのあたりのポジショニングになるのか…あらゆる側面から情報を整理・構造化し、「目指すトーン」を定めることに多くの時間を割きました。
ロゴの検討
「目指すトーン」がある程度合意でき、次はロゴを策定していくことになりました。
しかし単に「ロゴの形」を決めるというより、カラーを含め番組の画面デザインやセットにも影響するKV(キービジュアル)を決める行程でもあったので、判断軸も多く、議論は白熱しました。
ロゴをただ並べて込めた意図を説明する資料を持っていくのでなく、ロゴを中心にした一枚絵グラフィックをすべての案に対し制作して展開のしやすさを比較したり、放送画面上で実際にどういった見え方になるのかを検証したりする資料を作り、ここでも「カタチを作るデザイン力」だけでなく「情報を分解しロゴの決定にまつわる判断軸や要素を分解・整理するデザイン力」を意識してより良い意思決定ができるように心がけました。
KVとしての機能
ロゴとカラーが決定したあとは、さまざまなクリエイティブの指針になるKVとしての機能も持たせつつ、ロゴマニュアルとカラーパレットの資料を作成しました。
CGやテロップ、セットデザイナーなど多くの人が関わりクリエイティブを展開していく行程ではこの「マニュアル」はともすれば表現の展開に「縛り」を与えてしまうものでもありますが、長い時間を掛けて共に議論をし決定したものだからこそ、「番組のトーンを表現する上で必要なものである」ということを各担当者と共有できており、最終的なアウトプットも元々表現したかったメッセージやトーンを体現する「一つのパッケージ」として統一感のあるものになったと思います。